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とりかえっ子

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 ある日僕にお姉ちゃんが出来た。その日の夜にパパとママから
「今日からあなたのお姉ちゃんよ」
と言って紹介された子は、僕より少し背が高くて、優しそうな女の子だった。
 いつもお姉ちゃんが欲しいと言ってパパとママを困らせていた僕は大喜びでその子に駆け寄って聞いた。
「僕はシュウ。お姉ちゃんの名前は?」
「私の名前はショウコ。よろしくね」

 それから、僕達二人はいつも一緒だった。小学校に行くときも二人、遊ぶときも二人、何をするときも二人だった。そんな僕達二人をパパとママは甘やかして育てた。好きなものを買ってくれて、おいしいごはんを毎日作ってくれた。ただ僕が不満だったのは、少し転んだりしてひざをすりむいてケガをすると両親はあわてて外科に連れて行き、ちょっと風邪を引いたからといっては内科に連れて行かれて精密検査を受けさせられることだった。二人とも、おもてで遊ぶことを禁じられていて、もっぱら家でゲームをしたりネットを見たりして遊んでいた。だからあんまり友達はいなかった。

 ある夜僕とお姉ちゃんが、家でRPGで遊んでいると、パパの携帯に電話がかかってきた。パパは話を聞くとなぜかひどくあわてた様子になり、ママを呼んだ。それからすぐに、家の呼び鈴が押された。家に尋ねてきたのは黒い服を着た男達だった。
「顧客の子が重体で・・・」
「内臓がほとんど破裂・・・」
「すぐに病院へ・・・」
 パパとママはショウコお姉ちゃんを連れてくると、その男達に引き渡した。
「お姉ちゃんはどこに行くの?」
「お姉ちゃんはね、とりかえっ子なの」

 お姉ちゃんはとりかえっ子―クローンだった。 元になった人間が病気や事故で移植手術をしなければならなくなったときにそなえて用意されていた予備の子供だったんだ。お姉ちゃんの"元"の子が交通事故にあい、脳以外全てだめになったので、急いでお姉ちゃんの体が必要になったんだ。
「ショウコお姉ちゃんにはもう会えないの?」
パパは悲しそうに首を振った。僕はとても悲しくなって、そして今度は恐くなって聞いた。
「僕が事故に遭ってもとりかえてもらえるの?」
「それは大丈夫だよ、シュウのかわりはちゃんといるよ」

 お姉ちゃんのいない生活はとても寂しく悲しかったが、じきにうれしい知らせを両親から聞いた。今度は僕に弟が出来るという。ある日パパとママから紹介されたその男の子は僕よりちょっと背が低くて、おとなしそうな子だった。
 僕はいつも弟と遊び、そして次第にお姉ちゃんがいなくなった悲しみは消えていった。

 ある日、僕が小学校で授業をうけていると、突然教室に黒服の男達が現れ、僕を取り押さえた。先生があわてて
「どういうことですか!」
と尋ねると、その男達は
「とりかえっ子の回収に来ました。急いでいるので」

 そうだったのだ。僕のほうが"とりかえっ子"だったのだ。

 

(2004/12/1)

 

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