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魂の別れかた

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 第一の預言者が言った。
「その服を喜捨しなさい」
  私は服を脱いでホームレスに与えた。
 

 第二の預言者が言った。
「その皮膚を喜捨しなさい」
 私は皮膚を剥いで皮膚病で困っている人に与えた。


 第三の預言者が言った。
「その筋肉を喜捨しなさい」
 私は肉を削いで飢えている子らに与えた。
 

 第四の預言者が言った。
「その内臓を喜捨しなさい」
  私は内臓を全て提供した。
 

 第五の預言者が言った。
「その骨を喜捨しなさい」
  私は骨を喜捨し、脳だけになった。
 

 第六の預言者が言った。
「脳を喜捨しなさい」
  私は無くなった。
  それでも魂がのこった。私は考える。これだけ喜捨したのにまだ救われないのか、と。
 
 最後の、第七の預言者が言った。
「喜捨は見返りを求めるものではありません。そう考える心も喜捨しなさい」
  私は魂を喜捨した。魂=意識はすりつぶされ、ばらばらに砕け、とびちり、新しい生命に宿った。 ある一片はコオロギの卵に、ある一片はオナモミの実に、ある一片はくじらの赤ん坊に、そして最後の一片は人間の赤ちゃんに。バラバラになった私はまた再び他の魂と融合しながら、それぞれの生を歩む。それはまた苦しい道だろうか。
「あなたが苦しいと思うなら、また苦しくなります。あなたが喜びだと考えればそれは喜びに変わります」
  ならば、楽しいと思うことにしよう。
  四散した全ての私に幸あれ。

 

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