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それは尊く、そして切ない

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 またあの約束の日が来る――私は行くのだ――約束の地へと。

 彼は転校していった。でも必ずここで毎年会おうと約束した。
 あの年、彼はなかなか来なかった。電話で必ず会おうと言っていたのに。やっと現れた彼はなぜか顔色が悪かった。一日彼と過ごした後。
「また来年も会おうね」
「あ……でも……もう」
「え?」
「ううん、何でもない」
 家に帰った私は知る。彼がその日の朝、事故に遭って死んだことを。

 私は来た。約束の地へと。ここもすっかり変わってしまった。そして彼はもう来ない。でも私は毎年ここへ来るのだ。あの日彼がそうしたように。約束を果たすために。
 あの日私は知ったのだ。"約束"の二文字ほど尊く、そして切ないものは無いと。

 

(1993/4/12)

 

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