index >> 小説置き場「悪夢は」 >> 幸せいろいろ

 

幸せいろいろ

--

「ゴールデンレトリバーを飼ってるんだ。二日前から」
「マジ? 俺犬好きなんだよ! 土曜に見に行ってもいい? 昼見の家ってどこ? 歪月町? なんだ近くじゃん。行くわ。ドッグフード買ってく」

 土曜。GPSを見ながら家を探す。昼見。電話をかける。
「おーい昼見、ついたぞ、ドアあけてくれー」
「いらっしゃい」
「どこどこどこよ、可愛い子犬ちゃんは?」
「こっち」
もそもそもそ。
「・・・何これ」
「犬」
 そこには、首輪をつけたブリーフ一丁の裸のやせたおっさんが四つんばいになっていた。
「どう見てもおっさんじゃん! どこから連れてきたんだ!」
「三日前に家の前をうろうろしてたんだ」
「っていうかそんなの家に入れるなよ!」
「わたしはあなた様の卑しい犬でございます」
「お手」
おっさんは手を上げる。
「よしよし」
「よしよしじゃねえよ」
「ドッグフードやってよ」
「わたくしめは卑しい犬でございます。ドッグフードをお与え下さいませ」
「やっぱり犬」
「犬じゃねえよ!」
 そこへ、呼び鈴が鳴る。二人と一匹、玄関へ。そこには、ゆうに100Kgは超えていると思われる大女。
「まあまあ大変すみませんね、うちからゴールデンレトリバーが逃げ出して、近所を探し歩いて居るんです、もしかしたらこちらのお宅に保護されているんじゃないかと思って来てみたんですよぉ」
「ご主人様」
「まあまあマリリンちゃん、こんなところにいたのね、さあさ帰りましょう、ありがとうございますね、マリリンちゃんを保護してくれて」
大女はマリリンをひょいと担ぎ上げると、礼を言って出て行く。
「僕の犬・・・」
昼見が悲しそうにつぶやきうなだれる。
「だからぜってー犬じゃねーって。これから駅ビルのペットショップに犬見に行こう、な?」
俺は昼見をなぐさめる。

 

(2009/1/16)

 

back