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背中の赤ちゃん

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 学校の前が変だ。赤ちゃんがそこら中に転がっている。立ちすくんで見ていると、門の前にいるぼんやりとした人影が、登校してきた連中の背に赤ちゃんを一人ずつ背負わせている。連中は気付いている様子もない。あんなもの背負ってはたまらないので塀を乗り越え学校に入ると、皆赤ちゃんを背負っている。
 教室に入ってみると先生はもう来ていた。急いで席に着くと何かが変だ。先生は昨日と同じことをしゃべっている。その先生の背中にももちろん赤ちゃんがくっついていた。前の席の奴に重くないのかと聞こうと肩を叩こうとしたら、そいつの背の赤ちゃんが振り向いた。そいつの前の奴の赤ちゃんも振り向いた。両隣の席の奴の赤ちゃんも振り向いた。先生の背の赤ちゃんも振り向いた。びっくりして教室から出ようと立ち上がると、前の席の奴の背の赤ちゃんが突然胸に飛びついて来た。隣の席の奴の赤ちゃんが腕に、後ろの席の奴の赤ちゃんが頭にしがみついて来た。思わず振り払おうとすると、机にぶつかって転んでしまった。そこへまた、赤ちゃん、赤ちゃん……。
 教室中の赤ちゃんが俺に取り付いてきたそしてそいつらは寄ってたかって俺を引っ掻き、つねり、噛み、引っ張り、むしり、引きちぎり。そして俺はすぐにばらばらになるだろう。

 

(1986/10/16)

 

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