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再生へ

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 頭がなく、あるいは腕がなく、あるいは胸から血を流し、あるいは腐りかけた屍体、屍体。見渡す限り、視界の全てが屍体で覆われている。その屍体の荒野で、屍体のない場所が細く長く真っ直ぐに伸びていた。これを"道"と呼ぼう。その者は、"道"を歩いていた。
 屍体は、まるで今死んだ、あるいは殺されたかのように生々しいものばかりであった。だが、歩き続けるにつれ、次第に様相は変わってくる。新鮮なまでに流れていた血は止まり、腐敗し肉は崩れ落ちる。そしていつしか骨が見え始める。その者が歩くのは白骨の荒野の一本道。
 この道は、無へ、完全な消滅へと続く道なのだろうか。長らく続いた白骨の山も次第に崩れ、風化し、やがて白い粒砂に還るのをその者は見る。歩む方向を間違えたのだろうか。逆の方向の果てにこそ生気に満ちあふれた世界が存在したのだろうか。
 骨は全て崩れ去り、白い砂の世界が広がったとき、その者は確信し、その歩みは力強くなる。この方向で正しかったのだ。見よ。その者の歩む先の、圧倒的な白の中に、小さな、小さな緑色が見える。一つ、二つと点在し、そして―その先には。
 その者は悟る。
 そう、再生は、全ての消滅から始まるのだ。

 

(1990/3/20)

 

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