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虫II

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 緑色のけばけばしい色をした宅配の配送車が、一軒の家の前に止まる。中から男が二人出る、一人は緑色の宅配業者の服を着て、もう一人は黒いスーツを着ている。黒スーツの男は、門の監視カメラの死角に入ると緑色のツナギを着た男にうなずいた。
「すいませーん、宅配便ですけど」
緑のツナギを着た男がインターホン越しに話しかける。その姿を確認したのか、「はーい、今あけまーす」と中から声がする。門のかぎが開けられる。二人は素早く中に入る。
 ツナギの男は玄関の戸を開ける。黒スーツの男はその脇に隠れる。奥の方から声がする。
「リュウト、これ持って荷物受け取ってきてー」
「うん、分かった」
 やがて奥の方からパタパタと足音がする。小学三四年生くらいの男の子が現れた。
「ハンコ持ってきたよー」

 無言で緑のツナギの男は荷物の下から拳銃を発射する。バンと爆発音を響かせると同時に男の子の頭が吹き飛ぶ。首を失った体がもんどりうって倒れる。首からは血。「S1を確認」
 隠れていた黒スーツの男も中へ入る。
「お兄ちゃん、今の音何?」
 脇の扉からさらに幼い女の子が顔を出す。ツナギの男は有無を言わさず拳銃を発射。崩れ落ちる。
「"これ"もS1だな」

 「リュウト! 今の音何!?」奥の方からあわてたような声がする。ツナギの男がさらに奥へ進もうとするが黒スーツの男がそれを制する。「最後は俺にやらせろ」「いいのか」「ああ」

 男は最奥のリビングへ入る。カウンターキッチンで料理していた女が顔を上げる。
「リュウト!? あら? あな・・・」
 男は拳銃を構え、ためらい無く撃った。最後に女が何か言おうとしていたようだったが、気には止めなかった。頭を失った女は後ろへどうと倒れ、体をびくびくいわせていたが、やがてその首のもぎとられた断面から無数の触手がずりゅずりゅと這い出してきてのたうちまわり始めた。
「S4を確認、これより焼却」
 ツナギの男が荷物から薬品を取り出し女の体にかける。触手に特に念入りに。やがてそれは発火し体を溶かし、焼き始めた。ツナギの男は、携帯を取り出すと、どこかへ掛ける。
「処理終了。S1が二体、S4が一体」「S2があと一体いたはずだが?」「それは・・・」
 黒スーツの男が言う。
「気にするな、自分でやる」
 そう言うと、拳銃を自分の口に突っ込んだ。

「S2処理終了、これより撤収します。関係機関への連絡をよろしく」
 緑のツナギの男は火の燃え広がり始めたその家を後にする。


(2005/12/30)


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