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マッサージ天国

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「こんばんわー。出張メイド・サービスから来ました冥土野マリアですけど、江口さんのお宅ですかぁ?」
「あ、ども、今晩は、ど、どうぞ」
「お邪魔しまーす。お一人ですか?」
「え!? ええ、一人暮らしです。さすがに一人じゃないとこういうこと頼むわけには―」
「はぁーでもご家族で頼まれる方って結構いるんですよぉ」
「…そうなんですか、かっ変わった人達ですね」

「えーと、それで今日はマッサージのみということでしたよね」
「え!? ええ、そうです―あの、"のみ"っていうと、他のサービスもあるんですか!?」
「ええ、もちろん! お掃除とかお洗濯とかぁ」
「…変わったオプションですね」
「オプション? オプションっていえばオプションですけどぉ…? あ、もうお布団しいてあるんですね、じゃあ、服をぬいで下さい」
「はっはいぃぃ」

「―あのぉ、別に全裸にならなくともよかったんですけど」
「え!? あっそっそうなんですか、ごめんなさい、何しろこういうの初めてなもので」
「まあ、いいです。じゃあ、そこに横になって下さいね」
「はいぃぃ」

「ああぁぁっうっ」
「どうですか―気持ちいいですかぁ?」
「あぁっはい、とっても―うあっ」
「ここはどうですかぁ?」
「うあぁっ―くっすごい」
「でしょーすっごいここ凝ってますぅ」
「そ、そうですか、最近疲れがたまってたから―うあっ」
「はいっおしまい!」
「ええっ!? あの、あの、もう少し下の方は―」
「あーもちろん今から下半身に移ります」
「あっそうですか。ごくり」

「どう? 気持ちいいですかぁ?」
「―あの、気持ちいいことはいいですけど、もう少し内側の方を」
「ここですか?」
「もう少し上の方を」
「…」
「…」
「ここは、マッサージしようがないですぅ!」
「ええっ! でっでもそこを刺激してもらわないと、どうしようもないですけど」
「そっ、そんなのはサービスに含まれてません! 私がやってるのは普通のマッサージですぅ!」
「ええー!! そんなー! こっこんなので一時間二万円なんて、ぼったくりだー!」
「はあぁ? 一じかん二まんえん!?」
「だってだってほら!」
電話の脇においてあった、小さなチラシを江口はマリアにつきつけた。マリアが見ると、

★出張メイド・サービス★

メイドさんのコスプレをした可愛い女の子が
あなたを天国へと誘います。

マッサージ料金:一時間二万円
でんわ ○○○-○○○○-○○○


と、ピンクのけばけばしくかざりたてた文字で書いてあり、ウィンクしているフレンチ・メイドのイラストがあしらってあった。

「…確かにうちの事務所の電話番号ですぅー! でもでも聞いてないですぅ! ひどいです社長、いくら売り上げが少ないからってこんなサギみたいなことー。すいません、すいません、料金は三千円くらいでいいですぅ」
「うっうっうーいんや、二万円払う! 可愛いメイドさんにやさしくしてもらうのが夢だったんだー! 二万円払うからやらせてくれー!!」
がばあっっと江口はマリアを押し倒した!
「きゃあああっダメですぅ!」
どん。がつん。どたん。
 マリアに突き飛ばされた江口は、部屋の端までふっとび、壁に思いっきり頭をぶつけて動かなくなってしまった。
「ああぁぁっすいません、ごめんなさい、江口さん、大丈夫ですか!? ちょっと、何か首ぶらぶらしてますけど平気ですよねぇ! 江口さーん! まだ天国にいっちゃだめですぅ!! 料金払ってからにしてくださいぃぃー!!」

 

(1998/8/16)

 

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