index >> 小説置き場「悪夢は」 >> 首

 

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 そこかしこの塀の上に首が乗せられていた。白骨化したもの、まだ腐りかけのもの。
 ふいに風を切る音がした。陽香が身をそらすと、その陽香のいた空間に太いピンク色の触手が伸びていた。触手はとまどったかのように蠢いてから、横の路地へと消えていった。触手の消えた先へ歩いてゆく陽香。そこは、古い商店だった。焼けただれ、何を売っていた店なのかは分からなくなっていた。薄暗い店内へ入っていくと、一人の男が椅子に座っていた。

 男だと思ったのは、灰色のスーツらしきものを着た、その太った体型からだった。だが、その胸から上のあたりに乗っている首は、少女のものだった。血の気を失い、くさりかけた顔が動き、唇から奇妙な声が響いた。
「どの首が俺の首なのだ? その首かー?」
突然男の胸の付近から太い触手が伸び、陽香の手、足、首に巻き付いて締め上げてきた。
 陽香は皮膚装甲を強化してから胸から触手群を噴出させて、男の触手に侵襲させると、その神経系を乗っ取った。そしてそのままその触手を操り、逆に男の腹にぶち込んでやった。少女の目が見開かれ、何か言いたげに口が開かれたが、その前にその首は胴体から転げ落ちていった。

 

(1998/7/23)

 

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