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夜。 人気のない、海岸沿いの道。
高校生くらいの男の子が一人、歩いている。
「何をそんなに深刻な顔をしている?」
「あたりまえじゃないか!こんなのやだよ、もう・・・」
「いやだったらやめろ。別にどっちでもいいんだ。お前が死んだって俺には関係ない」
「そんな・・・」
「選んだのはお前だろ?お前は死ぬのがいやだったから俺と一緒にいるんだ」
「それはそうだけど・・・」
「死ぬのもいや、殺すのもいやか?何をいまさら言っているんだ?一体俺を使って何人殺したんだ」
「・・・」
「数えてやろうか。10人だ、10人。しかもそのうち 5人は関係ない人間だ」
「やめてよ」
「やならやめろ。ここで立ちどまってれば、そのうちお前は死ぬ。俺はまた拾う人間を待つだけだ」
男の子はじっと手を見つめてしばらく立ちどまっていたが、やがて、うつむいたままだったが、歩きはじめた。
「ほうら、やっぱり死にたくないだろ。誰だってそうだ。死ぬのは怖いんだ。・・・ふん、今度は無視かい」

 街灯がほとんどなく、辺りは真の闇といっていい。波の音、そして遠くから時折きこえる車の音。
「こんなところに、ほんとにいるの?」
「・・・」
「ねえ」
「どこにでもいるって言ってるだろ?それとも、町中の、交差点のどまんなかでおしえてやろうか、こいつがそうだって?面白いぞ?そこでやればたちまち有名人だ」
「・・・わかったよ、ただ聞いただけじゃないか」

「こっち?でも、何でこんなところに人が」
「行けばわかる」
男の子は林の方へ、向かう。人の声がした。
「あっ」
そこには、男が4人、一人の女の子を押えつけていた。
「何だてめえ」
「おらっみてんじゃねえよ」
「助けて・・・」
女の子は、左右から手を押えられ、喉元にナイフをつきつけられていた。その服は、切り裂かれ、ほとんど全裸だった。

「ふん、目がいくのは分かるが、さっさとやろうぜ」
「べっ別に見てるわけじゃない!」
「このやろ何ぶつぶつ言ってんだ?あ?」
アーミーナイフを手にした男がのそりと近付いてきた。
「いや、あの」
「こいつじゃない。あの黒の帽子を被った男だ」
「すいません、あなたじゃなくて、あの」
「お前、いかれてんのか?これで刺して欲しいんか、コラ?」
「ちょっと待って下さい、今、その、出しますから」
「あ?何出すって?チンポでも出すんか?混ぜて欲しいってか?」
男の子は右手と左手を握って前に突き出す。 「おい、何のまねだ?」 男はナイフを付きだし男の子に向かってきた。
「あっ、今来たらあぶない!」
「!!あっ・・・が!」
男は、突然立ち止まる。
「おい、どうした?さっさと追っぱらえよ」
男は、倒れた。
「おい、どうした!?」
「だから言ったのに・・・」
男の子の手には、血塗れの刀が握られていた。
「死んでる!?」
「気違いか、こいつ殺しやがった!」
「この!」
女の子の手を押えていた男が立上り、ナイフを投げつける。
「あっ」
男の子はとっさに目をつぶるが、刀がナイフを弾いた。
「この馬鹿、よけろ!」
「だって」
「このやろ、これでもくらえ」
ナイフを投げつけてきた男が、催涙スプレーを構える。 しかし、噴射するより前に、男の子に袈裟切りにされてしまった。
「なんで切るんだよ!」
「お前馬鹿か?あんなのくらったらひとたまりもないぞ?」
「ひあぁぁぁ!」
あっけにとられていたもう一人の男が、情けない声を上げて走って逃げていった。帽子を被った男は、喋る事も、立ち上がる事も出来ずに、呆然と震えていた。
「よし、じゃあ、メインディッシュといくか」
「ほんとにこの人なの?」
「ああ」
「だって、何も抵抗もしないのに」
「・・・さっきさんざん言っただろ」
「・・・分かったよ」
男の子は、男の前に立つ。
「あの、ごめんなさい・・・」
「助けて・・・」
男の子は、刀を振り下ろした。

「よし、これでまた一ヶ月は持つぞ。何だ?何浮かない顔してる?また関係ない人間をころしたことか?別にいいだろ、結果的に人助けになったんだし」
「やめてよ」
「いやあぁぁぁぁ」
「うわ」
「ちっ、この女、レイプされそうだった時には声も上げなかったくせに、助けたらこれかよ。ったく、さっさといくぞ」
「うん」
男の子は、海岸の方へ、歩き去る。

 

(1998/12/18)

 

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