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灰白野原

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 歩き出す足の下が妙に粘りつくようになる。さっきまではさらさらの雪だったはずだが、灰色のねばつりつく表面になっている。足首までのめりこませながらゆっくりと一歩ずつ、前へ進んでいく。見わたす限り灰色の一面。空は夜、何もない暗闇。明かりも何もない。ただほのかに灰色の地面が光っている。
 ぼんやりとした頭で考える。ここはどこだろう。この灰白色には見覚えがあった。そうだ、これは脳だ。俺の脳の上だ。脳は痛みを感じない。だから、歩いていても俺は痛みを感じないんだ。
 ねばりつく足を灰白の地面からひきあげ、またのめりこませる。なぜ俺は脳の上を歩いているのだろう。どこで自分の脳をみたのだろう。どこかで、ぶちまけられた自分の脳を見た気がする。
 脳は痛みを感じない。だから歩いていても俺は痛くない。どこかで、俺は眠っているのだ。どうすれば目覚めるのだ。歩きながら、ぼんやりと思考する。ぶちまけられた脳を使って思考する。
 どこかに出口はあるのだろうか、と考え、目覚めればきっと歩く必要もなくなる、と思いつく。自分の脳を足で踏みしめる。こうすれば刺激が加わって俺は目覚めるのだ。痛みも何も感じない脳の上から。
 痛みもなにもない灰白の世界の中で、ぶちまけられた脳で目覚めることを願って、俺はただぼんやりと歩き続ける。

 

 

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