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ファイティング・レフリジェレイター

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 冷蔵庫は走っていた。
 港の第三埠頭を目指して走っていた。
 そこには、セイウチが最後の決戦のために待っているのだ。
 冷蔵庫には時間がなかった。

「遅いぞ! 俺を待たせていらいらさせようという魂胆か!?」
「ふん、こっちにも色々と事情があってな! さあ、決着をつけるときが来たようだ!」
「ああ、これが最後だ!」
 冷蔵庫とセイウチは次第にその間合いを詰めていった。

 それは凄まじい死闘であった。両者は自分の力と技の限りを尽くして戦った。
 冷蔵庫の右ストレートがセイウチの顔面に食い込む。セイウチの回し蹴りが冷蔵庫の左側面に炸裂する。冷蔵庫の頭突き。セイウチのラリアット。

 冷蔵庫は、だが、少しずつ強まってくる腹部の痛みに気づいていた。"時間が足りなかったのだ"。セイウチのドロップキックが腹部に決まる。こらえきれずに冷蔵庫は倒れてしまい、もう立ち上がることが出来なくなってしまった。

「どうした、この程度で立てなくなるようなお前ではないはずだ!」
「ふっ、残念だがお前の勝ちだよ」
「…? まさか、お前!」
 激しい腹痛に顔を歪める冷蔵庫へとセイウチは駆け寄った。
 そして前面のドアを開けた。

 生ものが腐りかけていた。

 

(1990/2/19)

 

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