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さまようグリーン小隊

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「どうだった、ロブ」
「だめです、こっちはとても踏破できるルートじゃありませんね」
「うーむ、困ったな」
「くそ、また囲まれちまうたーな。今度こそ国へ帰れると思ったんだが」
「ともかく、例によって南西のルートを突破する以外に道はないようだな」
「俺は思うんだけどよー、これは運が悪いというよりグリーンが間抜けなだけじゃねーか」
「…リック、陰口は本人のいないところで言え」
ガサゴソ。
「誰だ!?」
とっさに音のした方向へ銃口を向ける小隊長。そこに、下草をかきわけあらわれたのは、ブリーフケースをかかえたスーツ姿の東洋人だった。
「…貴様何者だ!?」
「おいおい、外人さんの集団かー? しかもサバイバル・ゲームの真っ最中かよ。平日だってのにいい身分だねー」
「おい、こら、止まれ!」
「おっと駅前留学してるから俺にはわかるが、並のサラリーマンだったらこうはいかねーぜ。ヘローエベリワン、ハーワイユー、ファーイン、センキュー!」
「こいついかれてるぜ」
「敵の斥候にしては間抜けづらだな」
「まあまて。いったい貴様は何者でどこから来た?」
「おっとよく聞いてくれた! 見ろよこの凛々しいスーツ姿。アルマーニだぜ。ちょっとスソが汚れちまったけどな。つまりサラリーマンってわけよ。今日は大事な取引先との会合があるからって早めに出てきてタクシーつかまえたら乗ってから気がついたんだがこれがこの辺りじゃ悪名高い上風タクシーでよ、知らない道にどんどん入っていくからこいつボル気かって啖呵きったら、お客さん、こっちが近道なんですよ、なんてぬかしやがって、あげく、すいません、道分かんなくなりました、お代金いらないですからここで降りて下さい、なんつって放り出されちまったってわけよ。まいったぜまったく。この俺の左腕に輝くロレックスの自動巻きによると、あと三十分で大通りに出ないと遅刻しちまうからな」
「…何を言っているかわかったか?」
「英語らしいことはわかりましたが、内容がちょっと…」
「おいおい、俺のこの完璧なクイーンズ・イングリッシュが理解できないとは悲しい外人だな。まあいいや、俺は先に行くぜ」
と、サラリーマンは南西へ向かう。
「おい、誰が行っていいと言った!」
「まあ待て、リック、今までの経験からすると怪しい東洋人には何かある。全員出発準備! 奴のあとについていくぞ!」
「何だ何だ? あんたらもマヨってたくちかい。それならそうと早く言えよ。まあ俺にまかせとけって。何せ俺は砂漠から生還した男として一部ではかなり有名人だからな」
 かくして、サラリーマンを先頭にグリーン小隊は前進を開始した。

 ガサゴソとジャングルを進むサラリーマン。その後を索敵しつつ着いていくグリーン小隊。
「小隊長、何か変であります」
「うむ、植物相が変だ。ジャングルというより―針葉樹林だな」
「俺の経験とカンによるともうそろそろだが―おっとビンゴ!」
突然開けた視界にグリーン小隊の面々はとまどった。
そこには、立派に舗装された道が広がり、車が激しく行き交っていたからだ。
「何だ!? これは? ここはどこだ? カール、位置確認!」
「何だあんたら、よっぽど迷ったんだな、ほら、あそこに案内板があるだろう?」
その道路標識には、

↑厚木 3km
  Atsugi

と書いてあった。
「何だあの文字は?」
「小隊長どの、あれはカンジ・キャラクターであります!!」
「アツギ? まさか、極東のアツギ基地か? そんなバカな?」
「ヘイ、タクシー! っと、あらら、また上風タクシーだよ。まっいいか、どうせすぐ近くだし。じゃあな、あんたらも気をつけて行けよー」
サラリーマンは颯爽とタクシーに乗り込むと去って行った。
呆然と見送るグリーン。ぽつりとリックが言う。
「ま、何にせよこれで国に帰れるわな」

 

(1998/8/19)

 

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