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ドウメキの森
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この森はいやだ、怖い。
上を見上げてはだめだ。 無数の目がこちらを見ている。
ぎちぎち、ぎちぎち。目玉がなる。
ぼとり、と目玉が一つ落ちてくる。「どこへ行くんだい?」
ぼとり、と目玉が一つ落ちてくる。「森のはずれのおばあさんの家へ」
ぼとり、と目玉が一つ落ちてくる。「パンとワインを届けに森へ」
だめだ、考えちゃ。目玉はこっちの考えを読み取るんだ。
ぼとり、と目玉が一つ落ちてくる。「考えちゃだめ」
ぼとり、と目玉が一つ落ちてくる。「こっちの考えていることが読まれちゃう、と考えていることを読まれちゃう、と考えていることを読まれちゃう」
ぼとり、と目玉が一つ落ちてくる。「ぎち」
ぼとり、と目玉が一つ落ちてくる。「ぎちぎち」
おばあさんの家のドアをノックする。中からおばあさんが現れる。私は言う、ぎち。おばあさんも言う、ぎちぎち。
この森はいやだ、怖い。
ぎちぎち、ぎちぎち。
(2008/01/21)