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チャトランといっしょ

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 妻は猫のチャトランを可愛がっていた。チャトランはたいそう頭のいい子だった。寝顔や、ボールにじゃれている様子も可愛くて、妻はいつもチャトランと遊んでは写真を撮っていた。
 そのチャトランが死んだ。いつも寝ているダンボール箱を抜け出して、キッチンの片隅の目立たぬところで息絶えていた。

「ねえ、クローンを作りましょ」
妻の提案に私は抗えず、チャトランの細胞をクローン動物製作会社に持ち込んだ。
 生まれてきたクローンの子猫は顔や背中の模様までそっくりだった。妻は喜んで子猫にチャトランと名付け、可愛がった。
 けれど、チャトランはやんちゃで、手に余ることがあった。それにあまり利口ではなかった。妻はしだいに不機嫌になっていった。
 ある日曜日昼寝していると、なにか罵声が聞こえ起きてしまった。そっと目を開けると、妻がチャトランを叩いているところだった。

 チャトランが死んだ。キッチンの片隅の目立たぬところで息絶えていた。妻は泣いていた。クローンを作ろうとは言わなかった。

(2011/9/22)

 

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