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クリスマス・プレゼント

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 町にサンタがやってくる。トナカイにソリを引かせてやってくる。
 時間は午前0時。街灯がオレンジに光り周りをほのかに照らす。辺りは一面の雪、雪、雪。
 サンタは白い袋と煙突の上部に似た四角い物を持ってそりを降りる。そして一軒の家に目をつけると、電柱をよじのぼり、その二階建ての家の屋根の上に降り立ち、かついできた煙突の上部を雪の積もった屋根にずぼりと差し込む。
「メリークリスマス」
 にたりと笑いながらその煙突の中を覗き込むと、そこには穴が開いており、サンタはその中へと身を躍らせる。
 煙突の下は子供部屋だった。ベッドに小さな男の子が眠っている。枕元に"サンタさんへのお願い"とたどたどしい文字で書かれた手紙を置いて眠っている。ふと、男の子が何かの気配を感じてベッドの上に起きあがる。眠い目をこすりながら、「サンタさん?」と問いかけ、赤白の衣服に身を包んだ男を見やる。
「メリークリスマス、純君、君の欲しかったラジコンロボだよ」
 にやにやと笑いながら、白い袋からプレゼントを出しベッドの上へ投げつける。
「ふわ、ありがとう!」と純がプレゼントを取ろうとすると、サンタはこう言った。
「但し君のおいしそうな頭と引き替えにねぇ」
 突然サンタの口から棒状の"口"が伸び、純の額に貼り付く。先端の回りから伸びた触手ががっちり純の頭を押さえる。"口"の先についた高速回転するドリルのような歯がぎりぎりと純の額に穴を開け、さらに中心から伸びた棒が純の脳に突き刺さる。棒はぐるぐると回り純の脳をよくかき混ぜると引っ込み、その脳をサンタは口からすすり上げた。頭がからっぽになった純はそのままどうとベッドの上に倒れこんだ。
「いい夢を見てね。げげげ」
 サンタはジャンプすると煙突の開けた穴へと飛び上がり、外に出て再びそりへと乗り込んだ。「さあ、次のプレゼント配達先はどこかな?」

 そりを走らせ、めぼしい家を探していると、「おい、ちょっと待て!」と巡回パトロール中だった警官に呼び止められる。二人組の警官は、足を膝まで雪にもぐらせながら走って駆け寄って来た。
「なんだ、これは一体?」一人が声を掛ける。サンタはニタニタ笑いながら言う。「子供達へプレゼントを配っているんですよ」警官はいぶかしげに聞く「何かのイベントか? 身分証か何かは?」「そんなものはありませんよ。それよりどうです、あなたがたも一つプレゼントをうけとってもらえませんか」「はぁ?」
 サンタの腕が突然伸びたかと思うと、一人の警官の左胸に鋭く突き刺さった。真っ白い雪を染める真っ赤な血。警官は何か言おうとしてそのまま倒れる。
「う、動くな」もう一人の警官があわてて拳銃を構えたが、もう一方のサンタの手がすでにのどを掴み、締め上げていた。「ぐ、がが」サンタがさらに力を込めると警官の首は折れ、力無く雪の上に倒れこんだ。そのまま首を捻り切り、捨てる。「子供の新鮮な脳じゃないとね、大人の脳は風味が落ちるんですよ。げげげ」サンタはそりを走らせる。
 やがて一軒の家に目をつけたサンタはなれた手順で屋根に煙突を据え付け、中を覗き込む。
「おいしそうな子を見つけたぞぉ」サンタは部屋の中に忍び込むとベッドで布団をかぶって寝ている子供に向かって両手を伸ばす。ガバッと布団をあげると、そこには、丁度子供の形に似せ布団を膨らませていた毛布があった。「おや?」

 とまどっているサンタに隠れていた女の子が背後から思い切り振りかぶったハンマーを一撃、二撃。
「ぐ、が」
 頭蓋骨が割れたサンタが振り向いたところに今度は男の子が電動ドリルを口から脳に向けて突っ込む。「あがががが」さらにハンマー。完全にサンタは絶命する。
「やったね、お姉ちゃん! サンタを狩ったよ」
「うん、これで欲しいものはなんでも手に入るね」
「でも本当にサンタっていたんだね、お姉ちゃんにサンタ狩りの話を聞くまでうそだと思ってたよ」
「アタシも半信半疑だったんだけどね」
 床に倒れているサンタから赤白の服を脱がせていく。「これを着て白い袋にお願いすれば、なんでも好きな物が取り出せるはず」

 姉は脱がせたサンタ服を着てみる。つぶれた頭からサンタの帽子を取ってかぶる。「ぶかぶかだね」
「じゃあ、シンちゃんは何が欲しい?」
「えっとね、いっぱいあるけどカードバトルゲームが欲しいな」
「ちょっと待ってね、今袋の中見てみるから」
 姉は白い袋を探ると中に入っていた箱を取り出した。
「わーい、ありがとうお姉ちゃん」
「いえいえどういたしまして、そのかわりそのおいしそうな頭を頂くよ」
 振り向いたサンタの顔はもう姉のそれでは無かった。がばっと口を開くと弟の頭に覆い被さり、ごきごきと頭蓋骨をかみ砕き、中の脳を吸い出した。
「メリークリスマス、いい夢を」
 サンタはジャンプして煙突の穴から抜け出ると、おとなしくサンタの帰りを待っていたトナカイたちの引くソリに乗り込み、また次の獲物を探して町へ出発した。血塗られた衣装を身にまとって。

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